ゆどうふ

「豆腐はたいしたもんです」
「はあ」
「湯豆腐や良し。冷や奴や良し。煮豆腐や良し。揚げ豆腐や良し。万能です」小さな杯を口に運びながら、センセイはよどみなく言った。

センセイの鞄
ワタクシの中で湯豆腐のはなしと言えば「センセイの鞄」。今日は春菊も鱈も、お酒も入れませんでしたが。

いままで湯豆腐と呼んでいたものはそうではないことを知りました。そして「湯豆腐ってあんまりなあ」などという数々の無礼発言をお許しください。今宵のばんごはんは、ふわっふわでとろとろであつあつの嬉野温泉湯どうふ。あまくて、でもきちんと豆の味のするやさしいおいしさでした。

「温泉水で煮ると豆腐は豆乳に還元される」ってどんなトリビアルな知識でしょうか。京都あたりでいただく汲み上げ豆腐ともまた違ったかんじ。あれは固まる途中、なのか。投入する前はしっかりとした木綿豆腐なのに、ぼーっとしてるとあっというまに姿を消すお豆腐。どんどん溶けて白濁していくのを慌てて捕獲。はふはふしている間にさらに溶けていって、気がつけばすっかり豆乳鍋の様相を呈してしまった。ああ…。まるまる一丁分はとろけてしまったスープにお野菜キノコ鶏肉を入れて、それはそれで美味しくいただく。しあわせ。