西方浄土への旅 1(京都)


僕が旅に出る理由は、だいたい百個くらいあって。


同僚のセンセイとおんなふたりオノレを見つめなおす旅に出る。あれもしたい、これもしたい、と詰め込んでいったらぱっとみ無謀とも思えるスケジューリングになってしまった。しかしそれでも結構余裕のある、いきあたりばったり珍道中でございました。

新横浜6:12発のビーアンビシャスに乗って出発。簡単に「出発」とはいえどもこの時間に起きるのはなかなかの気合いが必要で。しかもわくわくして眠れない、という小学生っぷりを発揮して前夜寝たのは2:30。だめじゃん。新幹線の中でもさっさと寝ればいいのに、わいわいと話をしたり沿線のひとびとに嫌がらせメールを送ったりしてちっとも寝やしない。そして8:30にはすでに京都駅。はやーい!


荷物を駅に置いて、まずはイノダ本店へ。新しい方の窓際に案内してもらえたのでにんまり。けっこういい年のおじさまがたが新聞片手にやってくるのをみてうらやましく思う。スタバもドドールもいいんだけどさあ。近所で居心地が良くて美味しい喫茶店を開拓したいところ。赤い缶のコーヒーをおみやげに。




そのまま錦市場まで下る。ちょうどいちばん西側から入ったので、目移りに継ぐ目移りを重ねながら進む。豆乳のミニドーナツを買ったら「ちょっとちっちゃくなっちゃったから数入れといたよ!」だって。…10個くださいていったのに15個も入ってるよ!ほかにもばら売りの和菓子と、三木鶏卵の出汁巻と(いつのまにか日持ちするパッケージも出てました!)、おつけものを数種類。お正月用の丸餅も買いたかったけど(福島は基本角餅なので)これからの道中ずっと持つかと思うとうんざりするのでパス。去年出町ふたばに行ったのは最終日だったからね。お正月用の飾り切りとか、色鮮やかなお漬け物とか、まさに錦の市場。

…と、ここまでですでに午前が終わる。なんのための早起きかッッ!錦市場には魔物が棲んでいます(c)ナベブギョー。北野天満宮まではちょっといけないので、錦天満宮にて道真公にお参りをしてくる。なにとぞなにとぞ。十三やの前を通りかかったら去年は品切れだった丸に酢漿草の家紋根付があったのでお買い上げ。よーじやにも寄る(わたくしは買うものなし)。



てくてく祇園まで歩いておけいはん伏見稲荷大社へ。日本三位の人出を誇る神社なのにずいぶん空いてる。世間の年末休みはもう少しあとで、みやげ屋のおじさんによれば、29日にもなればお礼参りのひとびとでごったがえすんだそう。みれば神殿のすす払いをしたり、屋台の普請をしたりと、年末と新年の支度に忙しい。

本殿でお参りをして、千本鳥居の方へ。写真では見たことがあるけど、これはすごい。大きな鳥居はやまをぐるりとめぐるほど、小さなものは二列になってびっしりと立ち並んでいる。昼間なのに通路の中には電灯がともされるほど。なんなんだこれは。背筋を続々させながら通る。なにか、違う世界にもっていかれそうになる。上の方のお宮近くには「おもかる石」という灯籠があって、その頭部を願いごとをしながら持ったときに、思ったよりも軽ければ願いは叶い、重ければ叶わない、という。ためしに持ってみましたが…ま、結果は秘密。



参道のお店でお稲荷さんを食べる。ふたりで一人前でいいよね?と「おいなりさんひとつください」といったら、「ひとつでいいの?」と問い返され、「ああ、ちょっとですいません」と返す。そんなに混んでないから勘弁してもらおう、とか言っていたら、小皿にひとっつだけ出てきて目を点にする。「いや、一人前ください」と言った瞬間に店内が苦笑いで包まれる。…いやあ、だって、おいなりさんって一個単位でださないでしょ、普通。「ずいぶんと小食だと思ったんだよねえ」って!すっかり場の空気も緩んで、わいわいとおしゃべりをしながらいただく。ごぼうの漬け物きざんだのとごまが入っててとても美味しかった。

小雨がぱらぱらと降ってきたのもおきつねさんの縄張りだと思うとなんとなく納得。そのまま京都にJRで戻って、荷物を出して大阪へ。この時点で14時の少し手前。