マンダラ展−チベット・ネパールの仏たち−at 埼玉県立近代美術館


みんぱくでかなり内容の濃い図録を見つけて、面白がって読んでいるうちに行く気満々に。みんぱくで企画展をやったのはもう3年も前だったので、タイミングがよかったというよりない。単にマンダラを展示しているだけではなく、その背後にあるチベット・ネパールの仏教文化の解説や仏像の展示などかなり充実の内容。ひとまわりでどっと疲れます。

「マンダラとは装置である」という解説が目を引く。単なる芸術品ではなく神仏の世界を自らの中に生み出すための装置であると。あの方と円を組み合わせたかたちは、神仏の住む宮殿を真上から俯瞰して平面に落とし込んだものだそうで。蓮の花のように立体的な花を上からぺたんと開くように。透視法ではなくて、こどもが感じたままに描くパースのない絵みたいなイメージ。なので、それをそのまま立体で再現した立体マンダラもアリ。瞑想の中から自らの心中に宇宙を描き、仏を迎え入れる。と、自らの体そのものがマンダラとして機能しうる、とな。すごいわ。

日本の仏教はその伝播の過程で(政治的な意図も多いのかな)死生観を語ることに主眼がおかれて、今生きるこの世界がどのように成り立っているのか、という宇宙観にはほとんどノータッチだそうで。言われてびっくり、確かにそうなのかも。他の宗教はわりとがっちりと宇宙観に裏打ちされて構造化された思想があるわけで、「日本の外交ベタはそのせいかもね」なんてさらりと言ってしまうところが素敵。

同じ展示が名古屋に巡回したときに製作された砂マンダラの製作記録VTRは圧巻。コンパスと鉛筆で簡単に下絵を描いて、あとはひたすらさらさらと。砂とはいえ平面ではなくかなり立体感のあるものでゾクゾクする。これを4日で作るなんて!この時に製作された砂マンダラは固着されて展示されてました。ポップな色遣いでかわいらしい。

しかし仏教てのはふところの深い宗教だなあ。かの地のものと日本のものはまったく違うようにも思えるところとか、土着の信仰だの古い異教の神もどんどん取り込んでしまうところとか。まだまだ知りたいことがいっぱい(仏の名前はいっこうに覚えきれないけど!)