デザインの輪郭

デザインの輪郭

デザインの輪郭

すぐれた仕事人が自らの仕事を語るとき、それはたいてい自身の生き方を語ることになるのだな。

ポンとそこに何かが置いてあっても、例えば石が置いてあっても、それはそこに何かの力が存在していると言うことを、人間は、特に日本人はみているのかなって。

何かを達成したときとかではなく、かといって特別に気持ちのいい感触を味わったわけでもないのに、「ああ、幸せだ」と感じた事がきっとあるはずだと思った。そのときそう感じても忘れてしまうくらいどうでもいいこと。デザインと考えるということも、そのくらい些細な感触を見つけることだと思ったからだ。

発刊と同時くらいに買って、もったいないので少しずつぱらりぱらりと読み進めてようやく読了。自らのデザイン論を滔々と説くのでもなく、高い位置から難解な言葉をはきだすのでもなく。シンプルだけどよく選ばれたうえで発せられたことばが非常に心地よい。いくつもの地層で濾過された、天然のいい水みたいなかんじ。しばらく座右に置きっぱなしの予感です。

追記:造本もとても素敵です。本文と同じ大きさの薄ボールの表紙、かがり上製の角背、二本のスピン、トレーシングペーパーの天地を追って濃淡を出す、裏に刷って文字の濃淡を出す。閉じても開きっぱなしでも美しくて非の打ち所なし。ああ。