入試の心得

予定の時間になると、まず学部長が挨拶にたった。僕はこんなことにまで儀礼的な挨拶が必要なのだろうかと訝った。しかし挨拶は、次の様なものであった。
「皆さん、朝早くからたいへんご苦労様です。今日は、私達と一緒に、これから4年間あるいはそれ以上一緒に勉強する仲間を選ぶ大切な日です。ひとりでも優秀な学生が来るように皆さんも緊張感を持って臨んでください」
僕は、自分が少し恥ずかしくなった。入試とは、自分たちのいる大学への入学を許可するためだけのものではなく、これから一緒にやっていく人間を選び出すことなのだ。

佐藤雅彦 / 毎日新聞 2000/3 号「入試の心得」より

(新年のあいさつさえしそびれておりますが)今年もこのテキストを思い出して、胸に刻んで二月を迎えます。中学受験市場三割減とも言われている不況のおり、それでもうちで学ぶことを希望して集まる12才をお迎えする3日間。ずっと本部付きで、こどもたちの顔ではなく数字を見て過ごすからこそ、こういう思いを忘れずにいたい。