House of Light day1

昨夏、まさかの滑り込みアウトで涙をのんだ、ジェームズ・タレル/光の館にお誘いあって宿泊出来ることに。通常なら週末の予約は半年前に埋まってしまうような状態なのだけど、ひとつきほど前にまるごと貸切で押さえられて12名で訪れた次第。建物もプログラムも料理もお酒もおしゃべりもなにもかも最高にすてきだった。直島ではじめてタレルを見てから、9年越しの夜。いろいろと、忘れ難いことばかり。

残念なことに早い梅雨入りをうけてパッとしないお天気だったのだけど、それさえも建物を楽しむひとつになった。ぱたぱたと屋根を打つ雨音、とおく聴こえる虫やかえるの声、誰かが回廊を歩く音、開け放した障子から吹く風、薄暗い廊下の色味、ことこと煮炊きをする気配、奥の間から聴こえてくる笑い声…。

環境のすてきさはもちろんなのだけど、「誰かといっしょになにをするでもなく同じ屋根の下にいる」というだけでも楽しいんだなあ。よく知っているはずなのに、なんだかすっかり忘れていた感覚(ひとり暮らしも長いのでね)。食事の支度をはじめたら、みんなキッチンそばに集まってきて、手持ち無沙汰にしているのもなんだか可笑しかった。

みんなで仰向けになって、ぼんやりと空の色が変わりゆくのを眺める。こんな贅沢な時間の使い方ってほかにあるだろうか。四角く切り取られた空はぐいぐいとその色と質感を変えていく。おなじようにおなじ空を見ていても、見え方も感じ方もきっとそれぞれに違うのだろうな。のっぺりとした漆黒になって「なんかもう、海苔に見える」と言い出したあたりでちょうど一時間。(夕食は手巻き寿司を支度していたのでした)

夜半過ぎ、もういちど屋根を開けて部屋の電気をすべて消してみたら、空が白く浮かび上がったのに驚く。月は見えない時節のはずなのに少し明るいのね。照明の輝度によって、地と図が入れ替わるような不思議な感覚。雨粒が落ちはじめたのがとても残念。

布団をひきおわらないうちから息が上がるほど枕投げして(大人げない)、年甲斐もないやんちゃぼうずがかわいこちゃんを泣かして、寝つけない人と気が済むまでおしゃべりして、雨音とさまざまな寝息(あるいは…)のアンサンブルのなかで眠る。