『光の帝国』『すべての風景の中にあなたがいます』

演劇集団キャラメルボックスハーフタイムシアター、『光の帝国』『すべての風景の中にあなたがいます』を新宿FACEで見て来ました。FACEって要は旧新宿リキッドルームなのですが、フロアの内装含めてほぼそのままなのに驚き。ああ、ここで見たいろんなライヴがフラッシュバックするわ。

一般的に「演劇でオンガクを使う」というとBGM的な使い方が浮かぶだろうけど、キャラメルの場合は、むしろ映画の主題歌のように、舞台上の雰囲気を一瞬で持っていくような使い方をする。ライヴ並に音量もデカいし。

【以下、思い入れの強い楽曲を中心にした話を。ネタバレってほどのものではないけれど、使う楽曲さえ知りたくない人は、観劇後にまたお会いしましょう】
この日はコンタクトのメンバと一緒に見に行ったのですが、予想通りイントロ一発で清水くんの嗚咽が聴こえて笑いました。へっへっへ。"Today, Today, Today" は冒頭ダンスシーンの曲だったのですが、オープニング的な使い方にも、歌詞を丁寧に解釈した振りにも心底驚いたみたいで、終演後に役者さんと話した時にもとても盛り上がってた。この体験がまた、コンタクトの音に対していい刺激になるのを期待したいです。ふふ。

選曲の/オンガクの神様は時たまとても意地悪で、このお芝居のオープニングは「眠れずに/今日が始まった/まだ何も変わってなかった」なんて、鬱屈ともどかしさを抱えた気持ちを歌っていた。そして60分後のエンディングで使われているvassaro CRAB 75の"Today is Tomorrow"では「いま金色の海が輝き/新しい日の訪れを告げる/そう僕らはここに」と、晴れやかに朝の光を浴びる。歌詞はもちろん、タイトルからして出来すぎだっつーの。

serial TV dramaの "宿り" だってそう。曲のあたまから長い尺でずっと流れている曲が、主人公の「忘れないんだ」という台詞を追いかけるように「忘れない/忘れないからね」とうたうなんてさ。たまりません。

「演劇は総合芸術である」なんて教科書みたいな文言だけど、書かれた時期も書いたひとも全然違う楽曲が、ひとところで物語を成す。もう他のピースがはまることが想像できないくらい、がっちりと噛み合ってひとの心を撃ち抜く場に立ち会うとなんだかもうたまらない気分になるのです。

今回の選曲解説(終演後、使用曲のリスト&解説プリントが配布されるのです)で「実はこのアオキというヤツはSPIRAL LIFEのファン同士。僕の(成井の)気に入るサウンドのキモを掴みきっているのですです。くやちーっ!!」なんてお褒めのことば(たぶん・笑)を選曲担当の加藤さんから頂いてるのですが、正しくは「好きなサウンドのキモがとても近い」なんだよね。「キャラメルで使えるような」バンドを探し歩いて音楽に接しているわけじゃないし(製作バイトだったのはもう6年前で、いまは仕事でもなんでもない)。

そう、自分がずっと好きな音に対して、誠実かつ貪欲に追っかけていってるだけ。その思いが実を結ぶ場所があるのは、個人的にとても幸せなことだと思う。「自分は直接的な表現者ではない」という自覚が最近ずいぶん強まって来たけれど、そのかわりになにかを成すべきで、自分にやれることはあるはずなんだよね。お芝居を満喫したのはもちろん、そういう雑多なことを色々考えた夜でした。