Dialog In The Dark 2008 at 日本科学未来館

赤いゲートをくぐると、そこはまっくら森。ちかくてとおい、まっくら クライ クライ。

まっくらな中での対話。

鳥のさえずり、遠くのせせらぎ、足元の葉を踏む音と感触、森の匂い、土の匂い、森の体温、街の息吹。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、日常生活のさまざまな環境を織り込んだまっくらな空間を、聴覚、触覚、嗅覚、味覚など、視覚以外の感覚を使って体験する、ワークショップ形式の「暗闇のエンターテイメント」です。「アテンド」の声に導かれながら暗闇の中を進み、視覚以外に集中していると、次第にそれらの感覚が豊かになり、それまで気がつかなかった世界と出会いはじめます。

初めて知ったのは1999年の日本初公開の時だから(ドイ研で教えてもらったのだ)、かれこれ9年越しでようやく行けました。ほんとうの暗闇の中を、視覚以外のすべての感覚を用いて進んでいく体験型の展示。1ユニットが少人数(今回は7名)なので、あっという間に予約で埋まってしまうのでした。

今回のテーマは「自然」。木々の香りが濃厚な森の中から、沢を渡ってすすきの原っぱを抜けて農場へ。ゲームして遊んだり、ブランコ漕いだり、ネコ車に乗ってる野菜を見つけて大騒ぎしたり。バーでいっぱい引っ掛けながらおしゃべりする、あっという間の1時間。

視覚を完全に閉ざされると、必然的に声でコミュニケーションをとることになるので、みんなわあわあとよくしゃべって、叫んで、笑う。遠くで啼く生き物の声に耳を澄ましたり、さらさらろ流れる沢に手を浸したり(落ちたり)、なんてことはない行動のひとつひとつがとても新鮮でした。「マルチメディア」なんて簡単に言ったりするけど、日々の暮らしがいかに視覚にばかり頼っているか、というのを思い知らされました。

ただ、くらやみのなかでも、それぞれの感覚から想起されるのはこれまでに体験してきた視覚情報なんだよね。今回アテンドしてくれた人(通称:隊長)はちいさな時はすこしだけ見えていた、とのことなので明るさの概念はあるらしいのだけど、生来全盲のひとはどういう枠で世界をイメージするのかなあ。

あ、あと、ひとり以外は初対面の一緒に回ったメンバーが、くらやみのなかであっという間に親密になるのも面白かった(ただ、その親密さは光が差すと同時にあっという間に溶けてしまったけれど)。チームビルディングの一環としてこのプログラムを採用している企業がある、というのも納得。

多くの人にあの感覚を味わってもらいたいなあ、と思いつつも、すでに今回分のチケットは完売(とほほ)。常設展示化への運動もあるみたいなので、ちょっと気にしていきたいです。
http://www.dialoginthedark.com/contents/whats_did/future.html