芸術人類学研究所 青山分校!神田出張所

huili2006-12-13


うん、やっぱりこの人ものすごく面白いと思うわ。中沢新一恐るべし。

夕刻に学校を抜け出して神保町へ。すこしだけ古書街を冷やかして、ここにきたら寄らないわけがない名店、天丼いもやへ。…うわ、もう閉まってる!わりと遅くまでやってたような気がするんだけどなあ。16:00くらいまで、と張り紙がしてありました。とほほ。仕方がないので丸香でかけうどん。讃岐ばんざい。

会場の明治大学リバティホールはうんざりするほど大きな箱。吹き抜けが高すぎてちょっと気持ち悪いくらい。人の顔が見えないと、文字通り「話が見えない」たちなので(メガネ取るとすぐに寝ます)前の方に陣取る。わーい、最前列!

タモさんがVTRで登場、darlingと中沢氏がちょっとだけトークしてすぐに本編。たっぷり一時間のお話でした。本より数倍面白かった。読後に「三段跳びくらいで話されているので追いつけない」と書いたのだけど、まさにその飛躍を補うような内容でした。ここも含めて書籍化すれば良かったのに!と思うほどに。この思考法がダイレクトに自分の生き方を変えるようには思わないけど、世界はそんな風にもとらえられる、というスキームとしては刺激的でした。

イントロのVTRで、タモさんが「知の芸能化」と言っていたのがとても印象的。最先端の学問も、みんながもっとわくわくして楽しめたらいいのよね、って。

以下に講演の内容をかいつまんでおきます。まだ噛み切れてない気もするし、自分用のメモとしか機能しない気がするけど。
そもそも三位一体モデルの礎となったのは…

  • バルセロナの知識人に話を聞いていたところ、とても「3」という数字に執着している。街のアレが三つの要素を持っている、だとか。「3」という数字にはよろこびだとか、生命力だとか、そういうものがあふれている。
  • そもそもそういう考え方はカバラにもあって。「2」ではなく、「3」を重視する。

2の原理

  • 世界をすべて「どちらか」に二分する。0と1、と置くとデジタルになる。それ以外の、記号以外のところから吹き上がる感情とか、余白とか、不合理さをすべて排除する。世界を合理的にはするけれど。資本主義ととても相性がいいい。

3の原理

  • 2の原理だけではない、よろこびとか意外性とか感情を、システムとして組み入れた原理。

いわゆるキリスト教における「三位一体」とは

  • 西ヨーロッパのキリスト教と、ロシア正教に代表される東ヨーロッパのキリスト教では、三位一体の概念がちょっと違う。どちらも父/子/聖霊の三つで構成されているのだけど…。
  • 東ヨーロッパにおける聖霊は、目に見えない、この世界の外からくるもの。その力を受けて、父と子、この世界は活動をしている。
  • 西ヨーロッパにおける聖霊は、父と子の共同の中から流れ出してくるものである、と。外部から流れ込んでくるものではなく、父と子に従属しているようなものである、と定義づけた。聖霊をぐっと押さえ込む事に寄って、非常に「2の原理」に近いものになってしまった。とても合理的で、貨幣価値に換算しやすい。これに資本主義をセットしたら、それはあっというまに世界を覆う事になった。
  • 東西ヨーロッパの対立を「資本主義vs社会主義」と見るむきもあるけれど、その根っこには聖霊に対する考え方の違いみたいなもんがある。

ひるがえって人類の発達をみると…

  • ホモ・サピエンスがほかの動物と違ったのはどこか?
  • 「流動的な知性」をもち、心の中に自分を超えた部分を持ったこと。心の中に「過剰」を抱えていると。それが宗教や経済や、芸術を生み出すきっかけになった。
  • イメージは流動的な知性を縫い留めるピンのようなもの。イメージを言葉にすることで世界を切り取り、単純な文法で世界を記述する事ができる。言葉そのものはただの音。

人間の思考は三つの要素でできている

  • 流動的な知性=なんだかよくわからない、「過剰」だったり、意識の外にあるもの=聖霊
  • イメージ=心と外の世界の通路となるもの=父
  • 言葉=イメージに置き換わって世界を切り取るもの=子
  • これが、三位一体モデルの根っこにあるもの。

さて、「1の原理」というのもある。

  • 流動的な知性のみに焦点を当てるもの。いわゆる一神教の考え方である。アッラーは色や形、姿を持たない。人間の範囲を超えたものが世界を満たしている、という考え方。キリスト教一神教だけど、すでに「父と子と聖霊」というシステムを組み入れちゃってるので。
  • 現在は2の原理が充満した世界に対して1の原理が猛烈に対抗している。みんなが一番幸せになれるのは、もともとの人の心の動きに最も近い3の原理ではなかろうかと。

日本人は…

  • そもそもの信仰のあり方が、とても3の原理に近い。唯一の神を崇めるのでもなく、西ヨーロッパのように外部からの流入を許さない2の原理でもなく。三つだけの円ではなく、もっとつながって拡張されたような信仰を持っているので、もしかしたら世界の中でユニークな存在になれるのかも。


うーん、聞いてるときはものすごくよくわかったような気になっていたけど、改めて書き出すと、自分の取ったメモだって怪しいもんだ。ひらめきの抜け殻だけ残ってるみたい。こんなんじゃあ土曜にもいちどぶっとばされてくるんだろうなあ。たのしみたのしみ。