10月はたそがれの国

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

……いつの年も末ちかくあらわれ、丘に霧が、川に狭霧がたちこめる。昼は足早に歩み去り、薄明が足踏みし、夜だけが長々と坐りこむ。地下室と穴蔵、石炭置場と戸棚、屋根裏部屋を中心にした国。台所までが陽の光に横をむく。住むものは秋の人々。秋のおもいを思い、夜ごと、しぐれに似たうつろの足音を立て……

大好きなひとに10月うまれが多いのは、生まれ落ちた瞬間に同じたそがれの空気を吸い込んでいるからか。

タイトルだけずっと気に止まっていたのだけど、こないだcowbooksで旧装丁&中まで綺麗に酸化して黄色くなった文庫を見つける(しかも一緒にいた人も10月生まれ!)。迷わず買って時間の隙間にさらさらと読了。ブラッドベリってこんな奇妙で淡やかな短編も書いていたのか。「広くて素敵な宇宙じゃないか」の原案になった 歌おう、感電するほどの喜びを! (ハヤカワ文庫NV) とか、ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫) のイメージが強いので少し意外。

それにしても「The October Country」を「10月はたそがれの国」と翻訳したセンスには脱帽。まあ本文ではこれだけ訳が古めかしい(めかしい、というか古い。初版がなんと1965年!)と、感覚的にひっかかるところもあるけど、それも含めてぼんやりとした「誰そ彼」の空気。秋のうちに読む事をお薦めします。