演劇集団キャラメルボックス『クロノス』

huili2006-01-14


なんて壮絶なお芝居だったんだろう。キャラメルを見に行くとわりかし恥じらいもなく泣かされてしまうのだけど、嗚咽をあげてしまいそうなほど揺さぶられたのは初めてかも知れない。カーテンコールを送る余裕もなし(ごめんなさい)。

原作はもちろん読んでいて話の筋はわかっていたのに。原作のストーリーには物語そのものが多少無骨な印象があって、そのなかで吹原の一途な想いだけが一直線に突き進んでいくようだったけど、いくつかのエピソードと登場人物が加わったことで吹原はますます魅力的で愛おしい人になった。家族とか、同僚とか、兄弟とか、大事な人を残していく事への葛藤が描かれていくなかで、彼は本当に素敵だったし、どんどん強くなってゆくように見えた。パーソナル・ボグを断るところなんてもう!

科幻博物館の成り立ち、というのも反則。彼に残されていったほうのひとたちが、いつか現れる彼のためにクロノスを護り続けるなんてさ。来美子も吹原もいない世界で、彼が来美子を救うためにもういちど現れるのをずっと待つひとたちがいる。凄いよ。キャラメルの芝居を見た後は、いつもすこしだけひとりっこなのが恨めしくなるなあ。なんて言ったら笑われたけど。

いま反芻していて気がついたけど、彼が最後の時間跳躍をするラストシーンは、じっくり考えるとちょっとパラドキシカル。クロノスの世界では、過去の改変とそれに伴う物体の変化は起こるのだけど、記憶の改変は起こらないのね(たぶん)。時間管理局もないし。

「私が死んだら時間を超えて助けに来て」なんて決して言えないけど、大事な人のそばにいられる、というのは何物にも代えがたいことだ、としみじみしてしまった。

春にはまたクロノスの物語に会える。どっちの話にもすっかり骨抜きにされたので、どう立ち上がるのかが本当に楽しみ。ふふふ。