夜の科学vol.19〜winter wanderlust 恵比寿天窓Switch

半年ぶりのGomes The Hitman山田ソロ/夜の科学は恵比寿天窓Switchにて。オンガクの神様ってのは、音に乗せて語るべき言葉とそれを奏でる声を対にして与えてるんだ、としみじみ思った二時間半でした。写真は山田さんのポケットからぽろぽろと現れてステージを飾ったオーナメント。

山田氏の声はわりとクセがなくて、歌いかたのスタイルも含めてとても朴訥とした印象を受けるのだけど、その声がかえって丁寧に言葉を積み上げて描写される世界観を膨らませるのです。アコギ一本ときおりwith Macというごくシンプルな編成だと、より一層映える(とはいえここ5年近くフルバンド編成の山田氏を見てないかもしれない…)。
現在製作中のアルバムは「家路」をテーマに温かな手触りのものと、「旅路」がテーマのえらくポップなものの二枚になるそうですが、今回は「旅路」アルバムの曲を柱にしたセットリスト、全20曲。途中で『"down the river to the sea"10周年祭』と称して当時の曲がいくつか折挟まれたのには、リアルタイマーとして腰が抜けた。あっという間に17,8の自分がフラッシュバックして思い出迷子。泣ける。

そんな風に10年の月日をまたいだ選曲だったのだけど、新曲の中でまさに「川を下り海を目指す」というような歌詞があったり、いくつかの曲で「五番目の季節」なんてフレーズが使われていたり、言葉は違えど、先を目指す意思だとか確実な足取りが見える想いだとかが見え隠れしていて、ひとつの大きな物語を聴いているようでもありました。

映像とのシンクロ具合も素敵でした。レイ・チャールズのHit The Road Jackに乗せて、ネクタイを締めジャケットを羽織りわたわたと支度をする映像、そのままの格好で袖から出てくるなんてニクいじゃないか。その後も全編を通して、VJではなく歌の世界をぐっと押し上げるような映像が使われていました。ラストの"ユートピア"で、スクリーンに映し出された月のほかに、ミラーボールの影でもうひとつの月が見えていた事に気付いたひとはどれくらいいただろうな。

"夜の科学"は90席ばかりのとてもちいさく親密なイベントで居心地はいいけど、いつもチケットが秒殺されて、どうも閉じたかんじでちょっと惜しかったのですが来年は完成したアルバムを手に、大きめのライヴだったり全国を回ったりするそう。よくよく話を聞くと「わー、ゴメス!」っていう人が結構まわりにもいることが判明してきたので(笑)、どうぞご期待を。たのしみだ。

blue moon skyline / 街をゆく/ 雨に負け風に負け / 北風オーケストラ / クレメンタイン / ONE / 三日月のフープ / 夏の日の幻 / believe in magic in summertime? / 平和なるサバービア / 真夏のスキャット / 溶けて死ぬのさ / pilgrim / SING A SONG / ユートピア
encore: サテライト / クリスマスイブ(山下達郎)/ 拍手手拍子
encore2: sweet december / Jingle Bells

つまんない蛇足をつけたすなら、山田氏の曲はそれを聴いていたころの「君」とか、「ぼくたち」の「たち」にあてはまる人の事をたくさん思い出させる。「一緒に聴いた思い出の曲」ってわけでもないのに(多分聴いてさえいない)。それが10年分積まれると、まあ、なかなか思い深くもあるわけです。ははは。

■ myspace: 山田稔明(GOMES THE HITMAN)