はたらきたい。の実学と哲学 at 日経ホール

情熱は約束を守る。

バンプの1stのオビにあるこの文言、折に触れて思い出すことの多い名フレーズですが、なんかこう、「おとなになって社会ではたらく」ってこともそういうことなのかもしれない。結局は他人との約束をきちんと果たせるか。自分との約束に誠実に生きていけるか。情熱って、決して無謀な挑戦とかじゃないからね。

というわけで、ほぼ日×リクナビCafe×日経アソシエの共催トークイベント、「はたらきたい。の実学と哲学」に行って参りました。自分で出したハガキは見事にハズレ、友達が当てたハガキを譲ってもらっての参加でした。素敵な機会をくれてありがとう!

話の内容は、非常に刺激的でありつつ、「うん、やっぱりそうだよね」って思う部分も多かった。とくに後半になるほど、目新しい視点が多かったような気がします。かつてラジオ番組のログおこしでならしたタイピング&要約力をフル稼働させて、しゃべりログをとってきました。まあ、そのうちほぼ日できちんとしたコンテンツになると思うんだけど。帰りの電車で補いつつ書いてたら8500字くらいになっちゃった。読んでも話みえないぜ?というツッコミ/あの会場にいた人からの補足を求みます。



はたらきたい。の哲学と実学 at 日経ホール

お足下の悪い中、会場には、わりと、オトナが多いです。

司会:
日経BP柳瀬/きっちりスーツ(でもしゃべりが鴻上風)

パネラー:
・渋谷/日経ビジネスアソシエ編集長/ノータイ
・川上/就職ジャーナル編集長/きっちりスーツ!
・前川/Feelworks社長/ノータイ
・イトイ/ほぼ日刊イトイ新聞/ノータイ、さらにシャツアウト!

■最近の就職事情はどうですか?

大卒の求人倍率の推移
・1990/2.86 → 2000(0.99)→ 2009(2.18)

学生が企業を選ぶ際に重視する点
・やりたい仕事ができる、がトップ。
・給与や福利厚生のポイントも上がってる。安定志向が強まってるみたい。

就職希望ランキング
・みずほ/三菱東京/三井住友の三大メガバンクが5位以内に。
・バブルの頃にはベスト100にベンチャー企業が入っていたが、最近はない。大企業の安定性を求めている。
・このランキングと、実際の会社のイメージってなんかちょっと違わない?
・イトイ:これ、誰の役に立つのかな?「働いていない人に聞くベスト」ってさ。
・渋谷:結局メディアから受ける印象をみて「へえ」って思うだけのランキングだよね。

今回とったのは「はたらくひとが選ぶランキング」
・エンタテインメントとか、サービス系の企業が多くを占めている。
・渋谷:なにがいい点として選ばれてる?「人事が公平」「上り調子」…これって、選んだ人が自分の会社に対して足りないと思っている点なんじゃないか。はたらくひとが不満に思っていることを満たしていそうなところを。
・回答数:6000を越えてる(!)
・日経からの回答だと、P&GとかGSとか。ほぼ日だと任天堂とかオリエンタルランドとか。
・川上:学生対象のランキングだと、大量採用→広報活動が活発 という点で、ランキングの上位に上がりやすい。
・はたらく人ランキングだと、ワーク・ライフ・バランスのとれた会社が上位に来てる傾向がある。

前川:入ったばかりの新卒が、直属を飛び越えて人事担当に辞める旨メールをしてくるらしい。で、かならずいうのが「この仕事では自分を成長させることができない」というらしい。ヒー!


■「自分に向いている仕事」を見つけるためにはどうすればいい?てか、今の仕事、向いてる?

前川:イエス。1982年に日経ビジネスの記者として最初はひどく大変だったけど、ここ2,3年ようやく楽しくなってきた。働いてみないとわかんないから難しいけど。自分に取っての3大ニュースを毎年書くのをやってみると、自分に取って何が必要なのか、何が大切なのかがわかる。

イトイ:自分を主体として考えたことってあんまりない。「俺のやりがい」はどうでもいい、まあ「食えない」のは困るけどさ。「こうなりたい」っていうビジョンを持ってやったことは正直ない。「来た球を打つ」てかんじで。それはそれで結構楽しい。「君が打つんなら変な球でもなげるけど?」って。デビュー作:スナック芸大全 はそうやって生まれたのね、実は。「誰かがやればいいのに」っていうことを、自分がやる。そう言う意味では夢とか希望はそんなになかったのねー。

柳瀬:最近の仕事の話って「やりたいこと」とか「目標」を決めてから、一直線に進めっていうけど。そうでもないかも。

川上:正直、よくわからない。新入社員の時は「ノー・モチベーション」てまで呼ばれてた。会社に入って、学生時代の野球ほどに夢中になれるものがない。面白くないわけじゃないけど、夢中になりきれないのがもどかしい。「天職がなにか」っていうのがわからない、ってのが正確なところ。いろんな職種をやってきたことで、新人育成が自分の集大成みたいに思えた。編集長って仕事も、製作やってたときのことが生きてるし。だから、「他の仕事がいい?」って言われると、今の仕事はとても楽しい。

柳瀬:さっきの、「合わないから辞める」ってのだと、川上さんみたいな成長の仕方は出来ないわけで。そう思うと、今の仕事が天職なのか転職なのか、なかなかよくわからないよね。

前川:編集ってなに?ってところからリクルートにはいった。リクルート事件のさなかに入社したので、まわりもなんか変な人ばっかりだった。でも、やってみたらものすごく面白かった。ものを作って、人が喜んでくれるのがとってもたのしい。で、あっちゅうまに20年。

会場の中にいるひとのうち、学生は1割くらいみたい。

自分のやりたいこと、決まってる人いる?→ひとり!会社作りたい。


■起業したい人って増えてるかな?

渋谷:この20年、変わってないような気がする。いま、「僕起業します」って言えるけど、昔はなかなか言えない雰囲気はあったんじゃないか。「なんだよ、うちの会社じゃ不満なのかよ」って。

イトイ:「社長をやる」って言い方はあったけど、ゼロから起業するっていう概念はあんまりなかったのかもよ?

前川:リクルート発の起業家がおおいってよく言われるけど、自分の代だと同期が900人いた。そんだけいれば起業する人はそりゃあいるよね。そこにスポットがあたっちゃうだけで、今でもリクルートで働いているひとはいる。

渋谷:実際のところ、新規開業率自体は下がってます。

イトイ:たとえば、ラーメン屋を開業します、ってのはカウントされてんのかな、それは?

渋谷:「新規開業率」ってのは法人登記の数で見ているので。そこまでは数えきれてないかもしれない。「起業」っていう言葉は、いまホリエモンみたいにベンチャー企業たちあげてバリバリ働いてお金儲けを目指すっていう意味にだけなっちゃってるのかな?ラーメン屋とかジャズ喫茶とか、そういうのをやるのでも本当は「起業」なんだよね。

柳瀬:そういう、ホリエモン的な「起業」の概念が出てきたのって、98年以降じゃないかと思うけどどうでしょうか。銀行や証券会社がバタバタと倒産した金融危機と、ITベンチャーブーム、あとはベンチャーの株式市場が出来たのが大きいと思う。ほぼ日の創刊も同じタイミングだったと思うんですが。

イトイ:うわ、そうか!知らなかった!(笑)。でも、スーツを着てるITっぽい「起業」と、お花屋さんだのカフェだのラーメン屋だの「起業」は同じように扱われないのはなんでだろうね。本来だったら、まったく同じものとしていいと思うんだけど。稼ぎ出す金額の違いなのかな。


■お金を稼ぐってどういうこと?

川上:学生が「給与面を重視」と買い受けれど、どれほど正しく待遇を知っているかは良くわからない。初任給で比べることは出来ても、賞与の実態はなかなかよくわからないし。「田の業界は儲かるらしいぜ」っていっても。「給与で選ぶ」っていうのは語弊があるし、そもそもその情報がはっきりわからないんだからどうしようもないよね。

前川:転職をしたがる人はやっぱり現職に不満があるからで。成果主義で、同じ会社の中でも給料の格差がでてきてる。でも、転職をする人が「とにかく大きなお金がいっぱい欲しい」ってわけでもないみたい。アップダウンがある博打的な稼ぎ方よりも、そこそこであっても安定した収入があるほうが選ばれる。バブル崩壊のあとにオトナになった20代のひとは、非常に不安定な世の中を見てきているから、逆に安定を求める。

柳瀬:平均が35才くらいの日経ビジネスのランキングでは、いわゆる高収入といわれる会社が
ランキングの上位にいるけれど、これはどういうこと?

渋谷:アソシエを作る前に、ビジネス誌の読者にアンケートを取ったことがある。よくあるビジネス誌にあるようなトピックをいっぱい並べて、「どんな記事が読みたいですか」って質問をしたのね。で、若い人はあれもこれもってたくさん○をつけるんだけど、35を越えると、あるふたつの項目だけまったく○が着かなくなるの。それは「キャリアアップ」と「スキルアップ」なんだけど。日本の会社にいると、そのくらいの年で自分の限界を見切ってしまうようになるみたい。「自分、それなりにがんばってるんだけど、まあ、このくらいかな」って。回答者の平均が35歳くらいのアンケートで、そういう会社が上位に来るのは、自分がまだ今以上に飛べる希望がある会社として選ばれてるんじゃないのかな。希望の星!

イトイ:いやあ、自分の35才を考えると、いろいろあきらめてた。「のぼっていく楽しさ」ってのはガキっぽい夢としてみんな持ってると思うけど、35ぐらいになると、「こんなに登ったのに、認められるのはこれっくらいか」って思って。40になると、さらに上を見るのはちょっと難しいかと思っちゃう。若いうちは「俺は社長になってやる!」って簡単に思えるけど、実際に20年やってみると、自分より上に煎る人たちはすげえんだ、ってことがわかってくるよね。できることが増えれば増えるほど,先の凄みがわかってくる。35って面白い年だねー。個人として競り合ってるうちはダメで、ライバルと手を組んだらいろんなことができるようになった、ってのがわかるのがこれくらいの年かも。

前川:仕事って、やっぱりひとりではできない。会社でもフリーでも。それぞれの得意分野を生かすことが仕事をすることだから。そういうことをうまく若いひとにつたえるのはとても難しいと思ってるんだけど。

イトイ:「あいつより俺が上」って考えてるうちは、ダメだよね。トップセールスマンひとりが稼ぐよりも、平凡な人5人で稼いだほうが大きいんだし。

柳瀬:まあ、一部のスーパーマンにばかりスポットをあてるのは、自分も含めメディアがよくやっちゃう手だけどね。

渋谷:いままではのビジネス誌に個人が載るのって、経営者かエコノミストしかいなかったの。アソシエでは、スーパーマーンばっかりじゃなくって、読者のロールモデルになり得るような「普通の、ちょっとすごい人」毎回掲載してるんだけど。最初は、「そういう記事を書かれると引き抜かれてしまう」って、会社側も渋ってたのね。でも、次第にそう言う記事が載ることが会社の評価にもつながるってことがわかってきて。「現場の人」っていうのは、みんなすごく面白い。やっぱりコミュニケーション力のある人が現場で光る。そういう「一緒にやりたい」ひとが魅力的なビジネスマンなんではないかと。

川上:そう、採用をする身としても、「一緒にやりたい」ひとが、やっぱり欲しい人。協力しながら大きな仕事を出来る、総合力が求められる。

前川:転職であっても同じだろうし。新卒と違うのは、転職の時は「何が出来るのか」がさらに問われる。「うちにきたとき、ほかのみんなとうまくやれるか」が大事。

イトイ:スキルって、いまはあっという間に陳腐化するよね。自分のスキルとしてアピールしていることが、実際は個人のスキルじゃなくて、チームのスキルだったりとか。うちの会社で採用をする時は、基本的にオレはなにもしない。ホントに「このスキルが欲しい」っていうのは、会社としての弱点なんだよね。穴になってしまってるところだから、たとえば人ひとり採用することで解決する問題じゃなくて、もっと構造的な問題なんだと思う。受験とかで個対個の闘いに慣れちゃってるけど、会社で働くって言うことは実はそうでもない。


■会社の「攻略法」ってなんぞ?

柳瀬:受験の場合には答えがあるけど。就職に関してはそういうものがあるわけじゃない。

渋谷:雑誌の性格上「これが答えだ!」的な提示の仕方をする必要がある時もあるんだけど、そういう時にはケーススタディとして紹介するようにしている。「この人/場合にとってはこれが答えだったけど、あなたはどう?」って。仕事って答えがない、というか、自分で腑に落ちるのが大切。それは受験と一番違うところ。

柳瀬:あ、それは「来た球を打つ」のとおなじですね。たとえば、さっきあげられた「この会社に入りたいランキング」の上位にいる会社に入れるひとってどれくらいなんですかね?

川上:今、新卒としてリクナビに登録してるのが60万人。で、このランキングで20位以内に入る会社に入る人は、2万人もいないかと。

柳瀬:てことは、たいていの学生は希望ではない会社に入ってるのね。これだけ枠が狭いのに、希望した会社に入れなかった人がつらい思いをするのは、ちょっとかわいそうというかもったいない気がするんですけど。転職の場合でも希望ではない会社に決める人っておおいんですか?

前川:転職の場合でも同様で、そのひとが「ここが必要だ!」と思う部分を補ってくれる会社は限られているわけで。そこにうまくマッチングできないひとは、そりゃあいますよね。

イトイ:たとえばさ、学校の教育は「もうちょっとがんばれば出来ること」をやりなさい、がんばりなさい、っていうけど、普通の人間はできるに決まってることをできないくらいが普通なわけで。昔よくあったじゃない、「無理目のオンナ攻略法」って。結局無理だからさ。できることを、人ときちんと約束して、出来るのが一番大切。進化ってのは右肩上がりじゃなくて、スパイラルなの。出来ることをコツコツやっていくことで、気がついたら上がってるってのがいいかと。それが「来た球を打つ」なのね。無理なことをやらないっていってるけど、やらなくちゃいけない時ももちろんあって。そういうのは努力だとか、人の力だとか、取材だとか。人に頼むことを覚えないと。ほぼ日を始めたのって、まさにその「人に頼む」ってやり方を始めた時なんだけど。よく、いい社長が「自分は何も出来ないけど、やれる人を集めました」ってのは、謙遜じゃなくて事実なんだよね。

渋谷:仕事柄社長さんにあうこともすごくおおいけれど、「できることをやる」のがなにより大切。毎日営業所に社員の顔をみる、とか。そういうことをやるのが一番たいせつ。

イトイ:「夢を持つ」っていうのは、そんなにチャラいことじゃなくて。できることをきちんと約束して、こなして行く、ってのが大事。ドラマみたいなサクセスストーリーをどうにも目指しちゃうんだけど、実はそうじゃない。


■ワーク・ライフ・バランス

柳瀬:ワーク・ライフ・バランスってことにも触れておこうと思うんですが、日経にも女性の社員がずいぶん増えてきてるけど。女性が活躍できる会社っていうのはとても大切。

川上:出産育児に対する福利とか、チャレンジの機会が男女ともに平等か。そういうことを仕事を選ぶ時に重点にする女性はとても多くなっている。

前川:「ワーク・ライフ・バランス」っていまよく言われているけど、昔から「仕事とプライベート」っていってただけで。人材への需要が高まっている中で、新しいコンセプトとして取り上げられているだけ。

渋谷:わたし、小説出してます!小説を書くようになったきっかけは、昔友人に「これからは経済記者だけじゃダメだ。これからは漫画の原作だ!ついてはシナリオ講座にいこう」て誘われて、そいつは結局一回も来なかったんだけど、それが面白くなっちゃって勉強を続けて、シナリオの賞とかをいただいて、結果、小説を書くことにしました。昔から「手帳の3割は余白にする」てのをテーマにしてて。ぎっちり予定を詰め込むんじゃなくて、なんにもない時間を作れるようにしよう。で、その余白があったおかげで「これがもしかしたら人生の転機かも」って予感した講座に行けた。仕事/プライベートを峻別するのではなく、トータルで余裕を持つようにするのが大切。なので、ワーク・ライフ・バランスってのは特に男女の問題ではなく、ひとりの生活者として大事な問題と思う。

柳瀬:イトイさんは最近よく「公私混同しろ」とおっしゃいますし、ほぼ日乗組員も女性がいっぱいいますけど、どう?

イトイ:その話をし出すと二日半くらいかかるんだけど。全然つながらない話を猛スピードで話すので、自分でうまくつなげて考えてくれるといいんですが。まず、前提は…「ものをつくるのが大変じゃなくて、ものをつかうのが大変な時代です」ということ。作ろうと思って作ることの出来る人はたくさんいるけど、売ろうと思ったら売れる人はそんなにいない。「消費されるのはどういうことか」とかそういうすべてビジネスの研究は商品に対して向かっている。そういう時に「買い物客としての女性」というのは強い。女性の購買意欲ってのが結局は消費を決めているわけで。仕事が終わった後に買い物に出かけるとか、雑誌を読んで流行をチェックしたりとか、そういう女性が無意識にしている行動が、実は消費に大きく影響している。それっていままで仕事として扱われるものではなかったけど、今は消費が先で生産が後。女性の習性としての、買い物へのリサーチやお化粧の時間や出産のための時間がじつはとても重要で。渋谷さんがあえてつくってきた「3割の余白」と同じように、そういうふうな時間をつくることで女性は自然に「余白」を作ってきたから。だから、男女の機会均等とはいえども、「男が二倍」になっちゃ意味がない。女の人がガンガン仕事しちゃったらそりゃあできるもん。なので、「女性として」、仕事ができるような環境を作って行かないといけない。…はしょりすぎたので、わかんないひとはずっと考えてください。詳細はこの先に出る本にて!担当は柳瀬さんです。


■最後に「はたらきたい」ひとにメッセージを。

渋谷:仕事って、基本的には善意から来てる。「人の役に立ちたい」「喜ばせたい」って。もうひとつは「なりたい自分になるため」ってこと。お金もすごく大事だけど、それを通して自分にフィードバックされて行くことがとてもおおい。

川上:学生は仕事に対して難しく考えすぎてるんじゃないかと「自分にぴったりの仕事がある!」っていう幻想に囚われすぎてるようで。「天職ですか?」「天職です!」とはっきり言える人はじつはそんなにおおくない。実際にいろんな仕事を見て、たくさんの選択肢から選んだひとつでやってみる、ってのはいいことだと思う。どんな仕事も「お金をもらう」ということは、人の役に立っているわけで。やってみて!

前川:「攻略」とか「マニュアル」とか。世の中として左脳的な発送をしてしまうけど、感性とか感情を大切にしてほしいと思う。自分も、迷った時に「このひとたちとなら楽しそう!」と思ったものを選んだ。5社のうち3社は、もうない会社だった。リクルートもあの事件のさなかだし、あと1年で無くなるぞ、っていわれたのにね。人間は寂しがりやなんで、誰かと一緒に同じ目標に向かうとか、誰かの喜ぶ顔とか、そういうものの積み重ねでしかない。自分のなかに入って行くだけではなくて、他者との関わりでしごとを考えてもらえるといい。

イトイ:子どものときって、すごく自由がない。オトナの付属物として生きている。オトナになると、自分の運転席に座れるようになる。大学に入った時に一回目の自由を手に入れられる。で、仕事を始めると一見不自由に見えるけど、自分ができるようになることが少しずつ増えて行く。「誰かを送って行く」ことも、自分のためではないけれど楽しいし。居眠りしたっていいんだし。その素晴らしさがなかったら、長くはたらくことはできない。「定年ってヤダな」って思ってる人は、実はおおいんじゃない?


■質問コーナー!

Q:どんな世の中がいい?

川上:日本の社会は「はたらく」ことに関して、なんかあきらめてない?もっと楽しいし、イキイキしていいもんだと思うし。「仕方なく働く」ひとが少しでも減ってくれたらいいかなあ。もっと満足して、ワクワクする世の中がいい。そのお手伝いが出来たらなあと思って仕事をしている。

Q:自分のおくさん、働いてほしい?

渋谷:妻は税理士。結婚したのは93年だけど、その時は資格を持ってなかった。資格に向かって努力してる姿はいまになれば、とてもいい財産になった。大切なひとだからこそ、いきいきとしていてほしい。「こんな世の中に!」ってのはあまりきちんと考えていなくて、自分のまわりの人が豊かになってくれればいい、てくらいにしか思ってないんだけど、いろんな人がいる多様性のある社会になればいいな、と思ってます。

Q:先生が教えることって逆じゃね?「夢を追え」とか「お金のことばっかり考えるな」とか。

イトイ:先生には「自分のことを棚に上げるな」と。自分の胸に手を当てて考えろ、と。面白い人って、夢を見てる人ばっかりじゃなくて。「約束を守る」ってのと近い。自分のことを忘れないようにして、説教をしてほしい。←あーもー、ごめんなさい!