ブラインド・ドライバー

昨日の夜、いとこの家から帰るときのはなし。

横は前駅のタクシープールでくるまをひろって「どこどこまで」って言ったら、返事もないまますうっと車を出す。ま、もう夜遅くだし運転手さんもお疲れなのだろうと思ってぼんやり乗っていた。表通りから右折して、すぐそのまま交差点を越えて直進するところで(交差してる道は一方通行なので、たいてい察してくれる)スッと止まる。しばらく経っても交差側から車が来る気配もないので「あ、まっすぐで」と言う。また滑り出す車。

家の前で「ここで止めてください」と言っても何も言わない。5010円出して、200円しかおつりをくれなかったので「5000円なんですけど」っていったら、胸ポケットから4000円をくれた。はい、どうも。

結局彼はひとっこともしゃべらなかったなあと思いつつも、ちょっとした違和感を感じて、思い返してみたらいっさい顔を正面から動かさなかった事に気付く。トレイから小銭をとるときも、お札を数えるときも、ずっと。目の見えないひとが手慣れた日常の動作をしてるみたいに。

お客さんに対しての愛想がないのは、まあどうでもいいんだけど、普通もの数える時って自然と視線がそっちに向くはずで。ま、目が不自由なひとがタクシードライバーになるわけはないんですが(運転はもちろんちゃんとしてた)なんだかちょっと不思議な出来事でした。