004/100 魂のゆくえ / ピーター・バラカン

魂(ソウル)のゆくえ (新潮文庫)

魂(ソウル)のゆくえ (新潮文庫)

「今週の課題図書」って言って貸してもらったのですが、とにかく名著であります。ピーター・バラカンがこんなにモッドで語り口の面白い人だとは思いませんでした。いままでの「日本語の達者な外国人」扱い(ダニエル・カールとおなじ枠)を反省したい。

タイトルは「ソウルのゆくえ」とルビが振られていて、その名の通り「ソウル・ミュージック」の栄枯盛衰をたっぷりのディスクガイドと共に綴っていく。ゴスペル=黒人の歴史をひもとくところから始まり、R&Bからソウルへの変革、モータウン・スタックスなどのレーベル/シーンを代表曲と共においかけて、フィリー・ソウル、そしてソウルの死まで。

そう、彼は「ソウルはもう死んだ」というのです。
これには異論反論あるのだろうけど、彼の論拠によるとそれはとても得心のいくものだなあ、と。虐げられた黒人の魂が生んだ、魂からの叫び。黒人の地位は、ソウル黎明期のたった50年前とは比べ物にならないほど向上した(それはもちろん喜ばしいことだ)。それによって、生まれた時と同じような意味での「ソウル・ミュージック」はすでに死んでいる、と彼はいう。

でも、この本の核心は一番最後の「ソウルのゆくえ」という節に尽きる。いや、それまでの部分も非常に面白いのだけど。ラスト三ページで血圧があがりました。かいつまんで説明したいけれど、ずっと歴史を追ってきたうえであのセンテンスを読むと、また格別だろうと思うので伏せておきます。いやあ、しばらくバラカン熱が続きそうです。……と盛り上がったところで、この本がすでに絶版と知る。N市図書館、えらすぎるよ…。

それにしても。こういう音楽史的な本を読むとき、YouTubeの偉大さをつくづく思い知らされる。この本に挙げられているような曲は、間違いなくなんらかの映像が残されていて、たとえばオーティス・レディングテンプテイションズの"My Girl"を聴き比べることだってあっという間にできる。公民権運動のくだりを読みながら、キング牧師のかの有名な演説を聴くことさえできるんだもん。たまらんです。

■ My girl - The Temptations 中途半端なダンスが可愛いのです