くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)

くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)

くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)

タイトルの語感に惹かれて読み始めたら、すっかり夢中に。『21世紀版 アルジャーノンに花束を』なんてコピーが付いているけど、かの作品よりもずっと主人公が思慮深くて魅力的。実際に実験を受けた後の描写はとても少なくて、いちおうはハッピーエンドというかたちになっているのだけど、ほんとうにハッピーなのかどうかは、彼が作中で問い続ける「正常(ノーマル)とはなにか?」という問いと同様にはっきりしない。いまのところなんの診断名もないままに暮らしている自分も完全に正常だとは言い難い。「"ふつう"というのは乾燥機の設定だな」という名台詞があったけど、その程度のものなのかもしれないな。

この物語はフィクションではあるけれど、自閉症サヴァンといったことがらに対する感度を上げるには有効だとおもう(いま、「理解を深める」と書こうとしてはっとした。そんな簡単に言葉を使っちゃいけない)。