夜の科学 vol.27〜farewell to the marble arch at 高円寺SALON by marbletron


2000年ごろのくらしを思いだすに、どうしても忘れ難い場所のひとつであるSALON by marbletronがクローズすることになり、最後の公演として山田さんが演るというので、そわそわと出かけてきた。幾人ものひととあの場所で出会い、初めて人前でDJをやったのもあの場所だった。そして彼のうたうGOMES THE HITMANもまた、2000年ごろのくらしにしっかりと刻み込まれている音楽だから。

今回、ゴメスの公式アカウントでライヴ実況をするというこころみに乗っかって初めてライヴイベントをtsudaってみたのだけど、なかなか面白かった。着席で、アコギ一本で、穏やかな雰囲気のステージだからこそ出来る芸当だけれど。シャッターを切るかわりに、その瞬間を140字でとじこめる感じ。気持ちよく頭を使いました。前日の追加公演(ややこしい)の担当が音楽ライターの宗像氏だったのでちょっとドキドキですけど、ポストのまとめ。

何度でも言うけれど「hanalee」が今日も素晴らしかった。もう2年近くライヴで聴いてるけど、聴くたびに新しい物語と風景が見えるような曲。物理的には何も変わっていないはずなのに、この曲を歌いだした瞬間に場の空気が完全に塗り替えられて、音がまっすぐに飛んできた。春に出るであろうアルバムに、どんなかたちで収められるのかがとても楽しみ。

それと、カバーコーナーで演られた「ぼくらが旅に出る理由」が、これまで幾度となく聞いていたオリジナルとまったく違うように聞こえたことに驚いた。もちろん「カヴァーである」というのもあるし、オリジナルのゴージャスさに対してアコギ一本のシンプルアレンジだったせいもあるんだけど、28才(当時)の小沢くんと(現在)36才の山田さんが歌うっていう違いが大きいような気がした。

総じてほんとうに素敵で、楽しめるステージでした。あのちいさな教室のような、温かい空間がなくなるのはすこし残念だけれども。素敵な思い出をたっぷりありがと、マーブル!
この二日間のライヴは全編をtwitter+映像のみUst、一部分を音声付きUstで中継したのだけど、いろいな事をかんがえさせられた。端的に言えば「JASRACに権利を預けてない曲」だけが中継に乗った。過去にメジャーレーベルからリリースされなかった曲と、まだ音源としてリリースされていない新曲。彼が作って彼が歌う。目の前で繰り広げられてる実演には何の差もないのに、ネットに乗せようとすると大きな違いがうまれる。そのもどかしさは、ここ数日にTLを賑わせている、まつきあゆむに端を発する音楽配信と著作権のありように対する熱い議論を見てまわって思うことでもあるのだけど。誰が誰のために何を守る権利なんだろう、と。

その一方、iPhoneひとつでライブを見せることができてしまうことにたいする懸念も少しある。なまものであるステージを、かんたんにきりとって送り飛ばすことについての意識みたいなこと。彼らの音楽は、表現であるとともに、対価を産むものでもあるから(乱暴な見方ではあるけど)。とはいえストリーミングに課金するかどうかというのは本質じゃない、たぶん。

音源としてパッケージされて流通する音楽の意味がちょっとずつ変わりつつある今、「実演」の意味はどんどん重くなっていくんじゃないかと思う。その場その時でしか味わえない音楽との関わり方、感じ方。なかなかむつかしいけれど、録音技術のなかった時代は、すべての音楽がライブであったわけで。伝達性より共時性とでもいうか。じっさいに相対しないとわからない、感じないことはやまほどある。最近ドはまりしてる「ドボク」な趣味もまったくもって同じ構造だしな、とふと気付いたりもして。もちろん立場によって全然意見は変わるだろうし、単純に解決出来るものではないけど、ずっと頭の隅っこにいれておかなくちゃいけない問題だとも思った。