夜の科学vol.15〜spring fair 2008 at 代官山晴れたら空に豆まいて
入学式の後の長引く会議にしびれを切らしながらも、終了と同時に風のように去る。1曲と半分くらい遅刻して、山田稔明/夜の科学vol.15 at 晴れたら空に豆まいて でした。駅から近くて本当によかった。
はれまめ、初めて行ったけどなんて居心地のいい場所なのか。80人くらいがぴっしりとベンチに座ってステージを見てる。遅れて行ったせいで、カウンタのスツールを使えたので非常に見やすくてくつろげました。いい場所だ。
ステージ上の山田さんを見ていて思うのは、この人ほど「歌に乗せたい思い」と「言葉遣いのセンス」と「ソングライティングのセンス」と「歌声のイメージ」にズレがない人はいないよなあ、ということ。クセのない訥々した声で、日常のかけらを拾い集めた(それでいてけっしてひとりよがりではない)言葉をシンプルなメロディで歌う。所謂ロック色の強くないシンガー・ソング・ライターって、作品も生き様もどうにもドラマチックになりがちだけど、そうでないところが好きなのよね。あと、話が長いところも好き。最近MCがますますさだ化してるんだけど、彼の物事に対する目線は非常に好ましいので、いくらでも聴いていたい。
ここからあとは感想というよりも「僕と山田、時々懐古」みたいなことになってしまったので、たたんでおきます(もともと感想でさえない気もするけど…)。setlistは山田さんのmonoblogからどうぞ。
"Puff"というふるいフォークソングのなかに出てくる島の名前を採ったHanaleeという曲は、たぶんここ最近の彼の思考がいちばん綺麗に結晶したものだろう。"Puff" の伝えんとするところはオトナになっても「こどもごころ」を忘れてはいけない、という解釈から、「天気がいいからちょっと走ってみる」とか「誘い合わせてバカな事をする」とか、そういう夢見がちな思いを忘れてはいけないと。もちろんもうオトナだから四六時中夢のなかで遊んでいるわけにはいかないけれど、できたら月に一度でもそういうことをしてみる/そうでなくとも心の中に秘密基地を持つほうがいいんじゃないか、だって。アンタはオレか、と久々に思いました。そういうネガティブじゃない逃げ場所ができたここ2年ちょっとは、普段の生活もとても潤ってきてる気がするしさ。
きぽーんろー、きぽーんろー、きぽーんろーと繰り返されるKeep on rockin'にジーンとする。いままであまり熱く語った事はないのだけれど,ワタクシはとにかく"Cobblestone"という彼らの2ndアルバムおよび2枚のシングルが大好きなのです。「架空の物語のサウンドトラック」という設定の作品はよくあるけれど、現・清水春日氏の手によるブックレット短編小説は「こぶる野」という街を
まさにゴメスの歌が描き出す風景のように描きだす。「一度訪れた場所の地図にネット上で印を付ける」というアイデアは、結局卒論の元ネタとして拝借したくらい(正確に言うと「携帯電話位置情報サービスによるモバイルコミュニティの形成」となる。今でいうはてなマップそのもの)。いろんな記憶が一気にフラッシュバックして大変でした。歌にまつわる記憶はかくも強烈だ。つづいてtsubomiとかほんとうに反則。22の秋が襲いかかってくるわ。
アンコールの時に「どうして音楽を仕事にしてるのかといったら、誰かの生活のなかに、自分の作ったメロディやフレーズがほんの少しでも紛れ込むのが嬉しいからだ」と言っていた。なんてヨコシマで、なんて純粋なことをいうのか。彼の思惑通り、ずいぶんと日記に引用してたり、ふふんと鼻歌を歌ったりしてる。インディ盤のdown the river to the seaを、ハイラインで手にしてからもう10年も経つわけなので、そりゃあたっぷり染み込んでるよ。年内には、あたらしいCDがリリースされそうなので、うろ覚えどころかハナモゲラ語でしか覚えていない新曲たちも、きちんと歌えるようになるはずです。